前足には、上に位置する関節から順に肩関節、肘関節、手根関節の3つの関節があります。関節に発生した病気によって、関節内で炎症が起こり、痛みが生じます。痛みが生じると跛行するようになります。跛行が見られた場合、できるだけ早く診断し、その病気に応じた適切な治療をおこなうことが重要です。痛み止めをのんでも改善しない跛行、原因不明の前足の跛行などご相談ください。
症状: | 飛び降りた拍子、高所から落下した拍子、もしくは普通の生活の中で起こった突然の前足の挙上 |
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- 肩関節が外れた状態、内方脱臼と外方脱臼があります。
- トイプードル、ポメラニアンなど、外傷による場合はあらゆる犬種で起こります。
- レントゲン検査
- 手術をせずに整復し固定をおこなっても治ることが少なく、外科的に脱臼を整復し固定する必要がある場合が多いです。内方脱臼ではスーチャーアンカーを用いて整復する方法など、外方脱臼では二頭筋腱の転移術などを行います。それでも再脱臼する場合、最終的な救済処置として関節固定術を行うこともあります。
症状: | わきをかかえて抱くとキャンと鳴く、前足の軽い跛行(初期は跛行がでたりでなかったりする)、慢性的な跛行 |
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- 肩関節を安定化させている組織のうち、内側を安定化させている内側肩甲上腕靭帯、肩甲下筋腱、関節包などの支持組織の断裂、損傷によって肩関節内側が不安定になり痛みが引き起こされます。
- あらゆる犬種、前足が開くような運動を頻繁におこなっている犬
- 麻酔下整形外科的検査、関節鏡検査
- 安静や外固定、消炎鎮痛剤など。それでも改善がない場合は関節鏡下で高周波熱発生装置をもちいたシュリンケージ、内側上腕靭帯の再建などをおこないます。
症状: | 通常4~8カ月齢で前肢を跛行します。初期は鎮痛剤に反応することもあります。診断がつかずに2~3歳になり、遅れて再び跛行を呈する場合もあります。 |
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- 上腕骨骨頭の関節軟骨が成長障害により厚みを増し、損傷を受けやすくなり、軟骨が浮きあがりはがれることで痛みを生じます。
- バーニーズ、ゴールデン、ラブラドール、シェパードなどの大型犬
- 関節鏡検査
- 関節鏡視下で軟骨フラップを切除します。大型犬の成長期の跛行は消炎鎮痛剤等による対症療法ですませず、跛行原因の早期診断、早期治療が重要です。
症状: | 休息によって改善し運動により悪化する前肢跛行、初期は鎮痛剤に反応しますが慢性的な跛行に至ります。 |
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- 二頭筋腱腱滑膜炎、二頭筋腱断裂、関節上結節からの二頭筋腱剥離、腱炎、脱臼などの二頭筋の腱の損傷。腱の使い過ぎなどによる外傷が反復することで発生すると考えられています。
- 大型犬、スポーツ犬、使役犬、活動性が高い犬
- 関節鏡検査
- 内科治療に反応がない場合、確定診断と治療をかねて関節鏡検査をおこないます。治療として関節鏡視下での腱切断術をおこないます。
症状: | 5~11ヶ月齢での前肢をかばう歩行、運動後や休息後に前肢をかばう、歩行時に頭を上下させるといった症状がみられます。診断がつかず関節炎が進行した中年以降に再び跛行することが多いです |
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- 肘関節形成不全とはFCP(内側鈎状突起分離症)、UAP(肘突起分離症)、OCD(上腕骨内顆の離断性骨軟骨症)、肘関節不一致の4つの疾患が複合した肘関節疾患です。単独でみられる場合もあれば、併発して見られる場合もあります。
- 肘関節形成不全症のうちFCPは、尺骨の内側鈎状突起の癒合障害により、尺骨から浮き上がった骨片によって関節軟骨の損傷が起こり、痛みが生じる病気です。
- ラブラドール、バーニーズ、シェパード、ゴールデンなどの大型犬
- レントゲン検査、関節鏡検査
- 関節鏡視下で尺骨から浮き上がった骨片を切除する等の治療をおこないます。
大型犬の成長期の跛行は消炎鎮痛剤等による対症療法ですませず、跛行原因の早期診断、早期治療が重要です。
症状: | 成長期の前肢跛行(FCPと同様) |
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- 肘突起の 肘頭への癒合障害により痛みが生じます。
- シェパードで多い
- レントゲン検査、関節鏡検査
- 分離した肘突起の肘頭への固定、分離した肘突起の切除
症状: | 成長期の前肢跛行(FCPと同様) |
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- 橈骨と尺骨の長さの不一致により、橈骨・尺骨・上腕骨によってなされている肘関節関節面の不整合が生じます。不整合により、内側鈎状突起への負荷が増え分離が起こり(FCP)、上腕骨関節軟骨の損傷が生じます。
- ラブラドール、バーニーズ、シェパード、ゴールデンなどの大型犬
- レントゲン検査、関節鏡検査
- 尺骨骨切り術など
症状: | 前足がオットセイのような形になる、手首が床に着く、前足の跛行、手首の関節の腫れや痛み |
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- 落下やジャンプに伴って起こる靭帯損傷や、免疫介在性関節炎、糖尿病、クッシングなど内科疾患に関連して起こる靭帯変性により生じる手根関節の不安定性
- あらゆる犬種で起こる可能性があります、免疫介在性関節炎にともなって起こる場合はダックスでの発生が多いです
- レントゲン検査など
- 外科適応の場合は全関節固定術、部分関節固定術、スーチャーアンカー法などをおこない、手根関節を固定します